頭痛、首や肩の痛みで

ある50代の女性は、ご主人につき添われての初診だったそうです。

以前から肩こり、頭痛、頸部痛がひどく、最近は夜中に何度も目が覚めるようになり、毎日が憂鬱でしかたなく、家事も外出もできないと訴えます。

この女性に医者が行ったのは、枕の指導による睡眠姿勢の改善と、訴えにとことん耳を傾けたことです。

その甲斐があって、眠れるようになり痛みも改善したと喜んでいた矢先、自殺願望を口にするようになったそうです。すぐに医者は、精神科を受診するようにすすめました。

整形外科医ができるのは痛みの訴えを受け止めることと、痛みの原因を探って治療することです。

しかし、精神的な疾患が原因で痛みが起こっているのだとすれば、精神科の治療が主体となります。この場合、整形外科は治療の動向を見守ることが務めとなります。

この患者のケースでは、ある日診察室のドアを開けて入って来られた瞬間に、間違いなく回復傾向にあることがわかりました。

少しふっくらした顔で微笑みを浮かべ、「治療が上手くいって、とても楽になったんです。先生が調節してくれた枕をちゃんと直しながら使っていますよ。眠れるし、食事もおいしいので太っちゃいました」といわれました。

そのかたわらには、いつも静かに見守っていたご主人のやさしい笑顔がありました。